DNA
遺伝子
DNAは、人間だけでなく、生き物なら何でも持っています。量は、人間の身体の中には、約20gしかありません。DNAは、親から子に伝わりますが、男性の場合は、精子という形で伝わりますから、DNAしか伝わりません。女性の場合は、自分の細胞を一つだけ子にあげることができます。子供は、半分づつ父と母からDNAをもらいますが、その量は、1000億分の1gくらいです。この微小な物質が、細胞分裂を促すことによって、60兆個の細胞がある人間の体になるのです。
人間の細胞一つひとつに2mの長さのDNAが折りたたまれて入っています。二重らせんの形をしたDNAは、そのうちの半分が子に伝わりますが、それがどんなふうに混ざって伝わるかはまったくの偶然です。それは、親がコピーするときに、100万文字の1つくらいの割合で、必ず間違いを起こすからです。100万に1つというのは、とても少ないようですが、DNAの文字は30億くらいあるので、相当の数になります。つまり、親から子へ行くだけで、100万分の30億の変化が起き、さらに子が孫をつくるとき、また同じ割合で変化が起こります。
人間のDNAは、ほとんどいらないものばかりの間に、ところどころに大事なものがあります。生物の世界では、大腸菌のような単純な生き物は、遺伝子がびっしりとDNAの中に詰まっていて効率が高く、増えることだけを至上命令にしています。しかし、人間は、昔、微生物だったときや、爬虫類だったときのものを残してきているのです。人間の体の中は、まるで、DNAの博物館のようなのです。これからも、人間は、機械のように合理性だけを追求しているわけではなく、歴史や自然の営みによって作られてきたものだということがわかります。
老化は、精子と卵子が出会って結ばれ、受精卵になった瞬間から始まります。たとえば、脳の神経細胞は、受精と同時に形成が始まっても、出生以前に分裂は止まってしまいます。一方、体を作り上げている細胞には、生殖細胞と体細胞がありますが、老化するのは、体細胞だけです。老化をしない生殖細胞は、次代を作るためにあるからなのでしょうか。
染色体の実体であるDNAは、二本の紐がねじれあっている二重らせん構造をしています。その紐の両端にほどけてしまわないように「テロメア」がついています。そのテロメアの長さが細胞分裂するたびにだんだんと短くなります。そして、DNAの二重らせんがほどけてくるのを止められなくなります。染色体の端にあるテロメアの長さが、だんだん短くなるというのは、体細胞にしか見られません。生殖細胞では、テロメアが短く変化するという現象は起こらないのです。ですから、分裂するたびにテロメアが短くなる体細胞によって、大部分が構成されている人間の体には、いずれは死ぬように仕掛けられた装置が組み込まれているともいえます。
”<禅と生命科学>から引用しました”
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