成年後見基礎研修(3)
法定後見人
元判事の講師は、講義の冒頭で、法定後見審判事件は、家裁の負担になっていること、もっと専門家の育成と関係機関のネットワークの充実が緊急に必要だと述べました。家事事件は、問題をこじらせないことと先を読むことが大切です。そのためには、親族関係の申立は、対立当事者がいる場合が多いので、成年後見審判と問題を分けなければなりません。たとえば、申立を利害関係のない第三者がするようなシステムが必要だというのです。
判例の解説は、わかり易くて具体的で参考になりました。たとえば、後見開始の審判事件の取下げを認めた事例(東京高平成16年・3・30)です。裁判所が本人の弟である申立人が指名してきたその弟の義弟ではなくて、成年後見人に第三者を選任しようとしたという事件です。「成年後見制度を利用するか否かを法に認められた者の申立てを待って判断している現在の制度の趣旨に照らせば、・・・・申立てを取り下げることは許される」という判決が出ました。それでは、どちらも統合失調症の本人と息子の保護は誰がするのでしょうか?
成年被後見人に財産がなく報酬を支払えない場合は、成年後見人のなり手がありません。逆に、資産がある場合は、成年後見人をめぐる紛争が親族関係で多くなります。成年後見人選任の不当を抗告理由とすることはできませんから、その利害の対立は、そのまま成年後見人が背負うことになります。成年後見人が辞任するときは、後任成年後見人の選任を申立てしなければなりませんから、なかなか辞められません。そこで、家庭裁判所なら必要に応じて複数の成年後見人を追加選任できますから、事柄に応じてそれぞれの専門家を選任してもらったり、法人を選任してもらったりしているようです。
相続放棄と後見人の利益相反行為については、判例では、後見人と被後見人が共同相続人であるときは、後見人が先に相続放棄をした場合、あるいは同時に相続放棄した場合には利益相反行為になるとはいえないとされています。しかし、相続放棄時には積極財産か消極財産かがはっきりしないときがあるので、消極財産を被後見人がすべて相続するということもありえるそうです。
後見監督人は、どんな時に選任されるのかという質問がありました。講師からは、現実にはほとんどないレアケースという答えでした。また、未成年後見人がいて、さらに成年後見人が選任された場合は、どんな役割分担になるのかという質問もありました。精神上の障害があり判断能力が欠ける常況にあれば、法定後見開始審判を申立てることができますから、その可能性はあります。講師の答えは、具体的によく考えたいので、行政書士会を通して返答したいという誠実なものでした。家裁でも、困ったときには専門領域の知識を活用しているそうです。頼られるようになるために、行政書士も専門性をさらに高める努力をしなくてはなりません。
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